エンジニアの間でAIを活用してプログラミングにCursorの活用が今や定番となっていますが、研究者、学生、ブロガー、ライターなど、質の高い文章を効率的に生み出したいという方々の間でも、知識管理ツールObsidianとAIエディタCursorとを組み合わせが脚光を浴びています。
この連携の核心は、Obsidianに蓄積したリサーチメモやアイデアの断片を、CursorのAIが文脈を理解し、論理的な文章へと紡ぎ上げる点にあります。今回は、リサーチから推敲に至るまでの執筆ワークフローに沿って、論文や記事の執筆にあたっての、具体的な実践方法をみていきたいと思います。
なぜ「執筆」にこの組み合わせが脚光を浴びているのか?
Obsidianの役割としては一言でいうと知識のストック。
論文、書籍、Web記事などから得た情報をノートとして蓄積し、リンクで関連付けを行い、自分だけの知識ネットワークを構築することができます。

Mac, Windows, Linux版があり、公式ページから無料でダウンロードして利用できます。

Cursorは本来はテキストエディタがベースなのですが、これにAI機能が搭載されていることで大きなパワーを得ています。
Obsidianによる知識ネットワークにAIが直接アクセスして、要約、ブレインストーミング、文章生成、リライトといった知的作業を瞬時に実行することで、自身の第二の脳、思考パートナーとして機能してくれいています。

CursorもMac, Windows, Linux版が公式ページから無料でダウンロードして利用できます。
今回はiCloudを介して、Mac, iPhone, iPad, Windowsで相互に共有できるようにしてみます。
iCloudの準備
Mac, iPhone, iPadには標準でiCloudは入っていますが、Windowsの場合には追加インストールが必要です。
MicrosoftストアでiCloudを検索して追加インストールできます。
完了後、Mac, iPhone/iPadと同じApple ID/パスワードでログインします。

iCloudのセットアップが終わったら、iCloud Driveの直下にわかりやすい名前でフォルダーを作成しておきます。
(もちろんMacで作成してもOKです。)

メインの機種でObsidianをセットアップ
Obsidianの初回起動時画面で「日本語」を選択すると表示が日本語に変わります。

「保管庫を新規作成する」で「作成」をクリック。

「閲覧」をクリックして、先ほど作成しておいた保管場所(iCloud Driveの直下に作成したフォルダー)を選択します。
ObsidianとCursorの連携はシンプル
ObsidianとCursorの連携はです。CursorでObsidianのVault(今回作成したフォルダ)を開くだけです。
- Cursorを起動します。
- メニューバーから
File
>Open Folder...
を選択します。(ショートカット:Cmd+O
/Ctrl+O
) - お使いのObsidianのVaultフォルダを選択して開きます。

これで、CursorのサイドバーにObsidianのフォルダとノートが一覧表示され、直接ファイル(.md
)を編集できるようになります。
複数のデバイスでObsidianを共有
今回のようにiCloudを介することで、Mac, Windows, iPhone, iPad同士で共有することができます。
Google Driveを介して共有することも可能で、Mac, Windows, Linuxで相互に共有できます。しかしその場合にはiPhone/iPadでの同期はできない状況です。
公式での同期機能(有料:月額$4)を用いれば、様々なデバイスでの共有が可能となります。
Obsidianでのリンクの張り方
Obsidianの最も強力な機能は、ノートを繋げて知識を育てることにあると思います。
そこで肝となるのがノート同士や外部情報を簡単につなげる「リンク」機能です。
リンクを使いこなすことで、知識は点から線へ、そして面へと広がり、「第二の脳」として機能し始めることを実感しています。
そこで、基本的なリンクの種類と、その作成方法について見ていきましょう。
1. 内部リンク (Internal Links)
自分のVault(保管庫)内にある、他のノートへ繋げるためのリンクです。
基本的な作り方
最も簡単な方法は、キーボードで [[
(左角括弧を2つ)と入力することです。
これで [[ノート名]]
という形式のリンクが作成されます。まだ存在しないノート名を指定すると、リンクは作成されますが色が少し薄く表示されます。そのリンクをクリックすれば、その名前で新しいノートが自動的に作成されます。
応用1:表示名を変える (エイリアス)
リンク先のノート名はそのままに、ノート上での表示テキストだけを変えたい場合があります。その際は |
(パイプ) を使います。
書式: [[リンク先のノート名|表示したいテキスト]]
応用2:特定の見出しやブロックにリンクする
長いノートの特定の部分に直接ジャンプさせたい場合に便利です。
- 見出しへのリンク:
[[ノート名#見出し名]]
[[ノート名
まで入力し、候補からノートを選択した後に#
を入力します。- そのノート内にある見出し(
#
や##
で作成したもの)のリストが表示されるので、リンクしたい見出しを選択します。
- ブロックへのリンク:
[[ノート名#^ブロックID]]
- ブロックとは、段落やリストの項目など、意味のあるまとまりのことです。
[[ノート名
の後に#^
と入力します。- ノート内のブロックのリストが候補として表示されるので、リンクしたいものを選択します。ブロックIDは自動で付与されます。
2. 外部リンク (External Links)
ウェブサイトなど、Obsidianの外部にある情報へリンクする場合、Markdownの標準的な書式を使います。
- 書式:
[表示テキスト](URL)
- 例:
[Google](https://www.google.com)
と書くと、「Google」というテキストのリンクが作成されます。
もっと簡単な方法は、URLを直接貼り付ける方法です。
- URLを直接貼り付け:
https://www.obsidian.md
のようにURLをそのまま貼り付けても、Obsidianが自動でリンクとして認識してくれます。 - テキストを選択して貼り付け:
- リンクにしたいテキスト(例:「公式サイト」)をマウスで選択します。
- クリップボードにコピーしておいたURLを
Cmd/Ctrl + V
で貼り付けます。 - 自動的に
[公式サイト](URL)
の形式に変換されます。
3. 添付ファイルへのリンク (画像やPDFなど)
Vault内の画像やPDFファイルへリンクを張ることができますが、下記の方法がカンタンです。
- エクスプローラーなどから画像やPDFファイルをObsidianのノート上にドラッグ&ドロップします。
- 自動的にファイルがVaultにコピーされ、リンクが挿入されます。
このとき、リンクの形式には2種類あります。
- 埋め込み表示:
![[ファイル名.png]]
- 先頭に
!
(エクスクラメーションマーク) が付きます。画像ファイルの場合は、ノート内に画像そのものが表示されます。
- 先頭に
- リンク表示:
[[ファイル名.pdf]]
!
がない場合、ファイル名だけのリンクとして表示されます。クリックするとそのファイルを開きます。
以上、マークダウン記法によるリンク作成の方法でした。最初はとっつきにくいかもしれませんが、慣れると意外と簡単ですし、AIを活用していく上で何かと便利です。
これらの機能により、情報と情報を自由自在につないでいくことで、知識ネットワークを育てていくことができるわけですね。
Cursorの使い方
Cursorは本来テキストエディタなので、直接テキストを打ち込んだり、テキスト編集を行うことがメインなのですが、AI機能として「プロンプト」を入力する場所(赤枠部分)があり、プログラムコードや文章の生成をAIに指示することができます。

ここで、「Agent」と「Ask」との使い分けがポイントになります。
Askは「Cmd+K / Ctrl+K」、Agent(Cmd+L / Ctrl+L)のショットカットで利用できます。

文章作成では、Askを「即座の編集・修正」に、Agentを「全体設計・分析・相談」に使い分けることで、効率的で質の高い文章を作成できるとされています。
1. 企画段階(Agent):「このテーマで記事を書く場合の構成案を提案してください」
2. 執筆段階(Ask + Agent併用): Askで各セクションの執筆、Agentで全体の整合性確認
3. 推敲段階(Ask):「この段落をより簡潔に」「専門用語の説明を追加して」
4. 最終確認(Agent):「この記事全体の品質を評価し、改善提案をしてください」
この使い分けをマスターすることで、CursorのAI機能を最大限に活用した文章作成が可能になります。
執筆ワークフロー例
ステップ1: AIを活用したリサーチと知識の体系化
- Obsidianの役割:
- 文献ごとにノートを作成し、Web Clipperや手動で重要箇所をコピー&ペーストします。
- 関連する概念や発見を
[[二重角括弧]]
でリンクし、知識をつなげます。
- CursorでのAI活用例:
- 難解な論文の要約: Obsidianのノートに貼り付けた英文の抄録や本文を選択し、
Cmd+K
(Ctrl+K)で「このテキストを日本語で要約し、主要な専門用語を3つ挙げて解説してください」などと指示。 - 論点の抽出: 複数のリサーチメモから集めた情報の断片を選択し、「これらの情報から導き出される主要な論点を3つ、箇条書きで提案してください」と依頼。
- 難解な論文の要約: Obsidianのノートに貼り付けた英文の抄録や本文を選択し、
以上のようにして、執筆の切り口を発見するようにしています。
ステップ2: 論理的なアウトライン(構成案)の作成
AIと対話しながら、アウトラインを作成していきます。
- Obsidianの役割:
- 執筆したいテーマに関するキーワードやアイデアを箇条書きにしたノートを作成。
- CursorでのAI活用例:
- Obsidianのノートを開いて、キーワード群を選択して
Cmd+K
で指示
- Obsidianのノートを開いて、キーワード群を選択して
ステップ3: 部分的にでも進めていく
構成案ができたとしても、真っ白なページを前にすると筆が止まってしまうことがよくあります。そんな時でもAIが頼りになります。
- 箇条書きを文章化: 構成案の見出しの下にアイデアを箇条書きし、その部分を選択して
Cmd+K
で「この箇条書きを、滑らかで論理的な段落に書き換えてください」と指示。 - 部分的な執筆依頼: 「『本論1:なぜテレワークは「孤独」を感じやすいのか?』のセクションについて、具体的な事例を交えながら300字程度で執筆して」のように、具体的な指示でドラフト作成を任せることができます。
ステップ4: AIを”壁打ち相手”に推敲・リライト
文章の質を決定づける推敲プロセス。AIを客観的な第三者として活用し、文章を磨き上げます。
プロンプト例:「この文章を、より客観的で説得力のある学術的なトーンにリライトしてください。」
- 表現の洗練: 「この段落の冗長な表現を削り、より簡潔にしてください。」
- 反論の生成: 「この主張に対して考えられる反論を3つ挙げてください。」(これにより、自身の論理の穴を塞ぐ。)
- 具体例の追加: 「この抽象的な説明に、読者がイメージしやすい具体例を追加してください。」
ステップ5: 面倒な作業を効率化(引用・フォーマット整形)
論文執筆で手間のかかる参考文献リストの作成も、AIの力を借ります。
- Obsidianの役割: Zotero連携プラグインなどを使い、文献情報を管理。
- CursorでのAI活用例: 手入力した参考文献リストを選択し、
Cmd+K
で「この文献リストをAPA第7版のスタイルに正確にフォーマットしてください」と指示。- 注意: AIによるフォーマットは完璧ではない場合があるため、最終確認は必ずご自身で行う必要がありますね。
まとめ
ObsidianとCursorの連携は、執筆を「孤独な闘い」から「AIとの共同作業」へと変える力を持っています。
リサーチの深化、構成の論理化、表現の洗練といったあらゆるプロセスでAIの支援を受けることで、本質的な「思考」と「創造」に集中できるようになります。
コメント