「うう、えっと……喉元まで来ているんだけど、口から出てこない」
俳優や芸能人の名前、最近話題のテクノロジー用語。
確実に“知っている”はずなのに、どうしてもパッと出てこない。
会議中、急な電話で席を外し、戻ってきた瞬間に
「……あれ? 今、どこまで話していたんだっけ?」
議論の流れが、きれいに抜け落ちてしまうこともあります。
年齢を重ねるにつれ、
「若い頃は普通にできていたこと」が、できなくなっていく。
そんな自分に、情けなさや不安を覚える瞬間は少なくありません。
この先も仕事を続けられるのだろうか。
社会のお荷物になってしまうのではないか。
人生100年時代。
定年制度は事実上、形骸化しつつあります。
中高年を取り巻く環境は、確実に厳しくなっています。
それでも、確かに「残っている力」がある
一方で、こんな感覚もありませんか。
提案書を読んだ瞬間に、
「これは本質を突いている」
「これは流行に乗っているだけだ」
——理由は説明できなくても、なぜか分かってしまう。
プロジェクトが危機に陥ったとき、
過去の修羅場を思い出すまでもなく、
不思議と落ち着いて対応できている自分に気づく。
「伊達に歳はとっていないな」
そんなふうに感じる瞬間です。
この感覚、心理学で習った理論があったはず……
「何とか知能と、何とか知能……名前が出てこない!」
そこでAIに尋ねてみました。
流動性知能と結晶性知能(Gf-Gc理論)
この理論は、
心理学者 Raymond Cattell と
その教え子 John Horn によって提唱された
「流動性・結晶性知能理論(Gf-Gc理論)」です。
流動性知能(Fluid Intelligence:Gf)
- 新しい問題に対応する力
- その場で情報を処理し、論理的に解決する能力
- 18〜25歳頃にピークを迎え、以降は低下するとされる
衰えやすい要素
短期記憶、処理速度、計算スピード、瞬発力
キーワード
「処理速度」「瞬間的な賢さ」
結晶性知能(Crystallized Intelligence:Gc)
- 経験や知識の蓄積から生まれる知能
- 年齢とともに伸び、65歳頃まで安定する
維持・成長する要素
洞察力、本質を見抜く力、判断力、言語能力
キーワード
「知恵」「経験」
この理論は、
「歳をとる=知能が衰える」わけではない
という事実を、科学的に示しています。

AIは「流動性知能」を補うパートナー
昔なら、教科書やノートを引っ張り出して
該当箇所を探す必要がありました。
今は違います。
AIに聞けば、数秒で思い出させてくれる。
私にとってAIは、
衰えつつある「流動性知能」を補い、
「結晶性知能」を最大限に活かすためのパートナーです。
AIは「思考の外在化」と「メタ認知」の鏡
「アイデアはある。でも言葉にならない」
この“モヤモヤ”は、直感の原石です。
心理学では、これを外に出すことを
思考の外在化 と呼びます。
- ノートに書き殴る
- 付箋を並べる
- マインドマップを描く
こうしてワーキングメモリを解放することで、
思考は深まり、本質に近づいていきます。
AIとの対話は、このプロセスを一気に加速させました。
曖昧な思いを投げる
→ 言語化された文章が返ってくる
→ 読み返して「自分はこう考えていたのか」と気づく
これはまさに メタ認知 です。
AIは答えを教える存在ではありません。
自分の考えを引き出す鏡 なのです。
実践事例:3,800件の調査データをGeminiと共に解析する
所属する研究所で、毎年大規模調査を行っています。
今回は3,800件超の回答。
本来なら IBM SPSS を使いますが、
週末の夜、自宅には環境がありません。
そこで、
Linux Mint 上の
Python と
Gemini を使うことにしました。
……が、手順をすっかり忘れている。
そこで自然言語で依頼します。

指示(プロンプト)
「アップロードしたCSVファイルは調査へご協力いただいた3,754件の回答を集計したものです。
男女別、年齢層別にクロス集計を行った上で、自由記述欄をテキストマイングして頻出単語の相関を可視化したいです。Pythonでの手順を示してください。私の環境はLinux Mint 22.1、Python 3はインストール済です。」
必要なツールの追加インストールコマンドを示してくれます。コピーボタンをクリックして、端末に貼り付けた後、Enterで必要なツールをまとめてダウンロード & インストールして下準備は完了!

・・・と思いきや、いきなりエラー発生。
仮想環境が作られていませんでした。
表示されたエラー表示をコピーしてGeminiにそのままペーストしてEnterするだけで、エラー内容を理解してくれて、対処方法を示してくれます。

次に生成してくれたPythonコードを、コピーボタンをクリックして、テキストエディタにペースト。
指示されたファイル名で保存。

あとはPythonのスクリプトを実行します。端末上にコマンドをコピペしてEnterで実行です。

ここまで15分程度。
昔はオライリーの技術書やネットの情報を参照しながら、コードの記述ミスもあったりして、何度もデバッグを行い、試行錯誤を重ねて、朝までかかって行っていた作業なんです。
エラーが発生した原因、デバッグの方法を提示してくれる。実行するのはあくまでも私。
AIがブラックボックスとして動作するわけではない。
以上のように、AIに、すっかり忘れてしまっていた作業手順を示してもらい、コードの生成、エラーのデバッグをサポートしてもらったおかげで、大幅な時間と手間を削減することができました。
これにより、週明けからどのように解析作業を行っていけばいいか、メンバーと検討していくための材料ができました。
コードの書き方はAIに任せればいい。
しかし、「どのデータとどのデータを掛け合わせれば真実が見えるか」は、自分の経験が大事。
AIが、私の流動性知能の衰えを補ってくれ、結晶性知能を活かすことができた、最近のエピソードとして紹介させていただきました。
忘れていい。考える力は、まだ伸びる
コードの書き方はAIに任せればいい。
でも、
「どのデータを、どう組み合わせれば意味が生まれるか」
それは、経験がなければ見えません。
AIが流動性知能を補い、
人間が結晶性知能を担う。
この分業こそが、
人生後半の最高のパフォーマンスを生みます。
AIという「外部脳」と、まだ現役でいるために
「もう若くないから」と技術を遠ざけるのは、もったいない。
AIは、
これまで積み上げてきた経験を
再び輝かせるためのパートナー です。
忘れることを恐れず、
思考を外に広げる。
AIという高性能な外部脳とともに、
まだまだ現役でいたいと思っています。


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