最近、パソコンの見積もりを取ってお客様に「えっ、こんなに高くなったの?」と驚かれる場面が増えました。その実感は正しくて、2026年のいま、パソコンは静かに、しかし確実に高くなっています。
理由をひとことで言えば AIとデータセンター です。本記事では、何が起きているのか、そして「では今買うなら何を選べばいいのか」を、できるだけ実務目線で整理します。
高騰の主役は「メモリ」と「SSD」
値上がりの中心にいるのは、メモリ(DRAM)とSSD(NANDフラッシュ)です。家電量販店でもネットショップでも、特に大容量モデルの値上がりが目立ち、数週間単位で価格が動くことも珍しくありません。
なぜか。答えはシンプルで、メーカーがAI向けの生産を優先しているからです。Samsung、SK hynix、Micronといった大手は、利益率の高いAI GPU向けの高性能メモリに工場のラインを振り向けています。一方でAIデータセンターの需要は爆発的に伸び続け、PC向けの一般的なメモリは品薄が続く――この需給の崩れが、価格を押し上げています。
数字も裏づけています。SK hynixは2026年に入っても「どの顧客に対しても需要を完全には満たせず、DRAM・NANDの価格上昇は避けられない」と表明。SamsungはNAND価格を2026年第2四半期に倍へ引き上げる予定とも報じられています。象徴的だったのは、Micronが個人向けの定番ブランド「Crucial」を2026年2月に廃止したこと。自作・増設ユーザーにはおなじみのブランドが消えるほど、市場の景色が変わってしまったわけです。
完成品PCにも波及 ― 納期と価格のダブルパンチ
部品が高く・足りなくなれば、当然その先の完成品PCにも響きます。実際、メーカー直販のBTOパソコンでは部品調達が追いつかず、納期が数か月単位という案件も出てきています。メーカー各社が早めの購入を呼びかけ、PC本体の値上げを織り込み始めている状況です。
つまり今は「待てば安くなる」とは言い切れない、やや厄介な局面です。供給改善の鍵を握る次世代メモリ(1c DRAM)の量産が本格化する2026年後半ごろから価格は下がる、という見方が有力ですが、それまでは高止まりが続きそうです。
「AI PC」は本当に性能がいいのか? ― NPUの現実
ここで気になるのが、数年前から店頭に並ぶ「AI PC」です。NPU(AI専用プロセッサ)を載せた新世代のPCで、Windowsでは「Copilot+ PC」がその代表格。NPU 40 TOPS以上が認定要件で、画面の自動記憶や画像生成、リアルタイム翻訳字幕といったローカルAI機能を売りにしています。
ただ、正直に申し上げると――多くの人にとって、NPUの恩恵を実感できる段階には、まだ至っていません。
理由は使い方にあります。私たちが日常的に使うAIの大半は、ChatGPT、Claude、Geminiのように クラウド側で動くAI です。この場合、処理はネットの向こうで行われるので、手元のPCにAI専用チップが載っているかどうかは、体感にほとんど影響しません。NPUが本当に効いてくるのは、画像生成やLLMを“端末の中で”動かすローカルAIの用途。そこに日々依存している人は、まだごく少数です。
さらに注意したいのが、量販店で「AI PC」と大きく謳いながら、実はNPU性能が認定ラインに届いていない製品も混在していること。「AI」の二文字に上乗せ料金を払っても、いまのところ見返りは限定的――これが2026年なかばの正直な現実です。
では、今買うなら何を選ぶか
ここからが本題。高騰期にパソコンを選ぶときの考え方を、3つの原則にまとめます。
① NPUに上乗せは払わない。お金は「メモリ」に回す:将来効くかもしれないNPUより、今日から効くメモリ容量。優先順位は メモリ > ストレージ > CPU >> NPU です。
② 後から足せない部分こそ妥協しない:最近のノートPCはメモリが基板に直付けで増設できない機種がほとんど。買ったときの容量で数年戦うことになるので、ここはケチらない。最低16GB、できれば32GBを。逆に増設できるデスクトップなら、メモリ・SSDは最小限で買って相場が落ち着いてから足す手もあります(ただしメモリ単体も高いので効果は限定的です)。
③ 大量のデータストレージはSSDからHDDへ逃がす:SSDが高い今、写真や動画などの大容量データは大容量HDDに分けて保存するのが再び合理的に。システム用に小容量SSD+データ用にHDD、という昔ながらの使い分けが見直されています。
用途別のおすすめ
- 事務・Web・メールが中心の方:背伸びは不要。メモリ16GB/SSD 512GBを満たす現行モデルを、必要なときに早めに。NPUの有無は気にしなくてOKです。
- AIを仕事で本格活用する方(クラウドAI中心):メモリ32GB/SSD 1TBを軸に。Apple Siliconの Mac は省電力かつ開発との相性もよく有力。Windowsなら法人向けのBTOで構成を自分で詰めるのが無駄がありません。
- 動画編集・画像生成・ローカルAIまで踏み込む方:ここで初めてGPU(と結果的にNPU)の価値が出ます。RTX搭載機を本格的に検討する領域です。
現状(2026年6月時点)で買うなら、という前提でスペックを用途別に挙げます。チップは現行世代が出そろっていて、AppleはM4の次世代となるM5がすでに登場、デスクトップはIntel Core UltraとAMD Ryzen 9000(Zen 5)が主軸、ノートはCore UltraとRyzen AIが競合という状況です。 XenoSpectrumJosis365
用途別推奨スペック
| 項目 | ①エントリー (事務・Web・メール) | ②スタンダード(推奨) (クラウドAI業務・開発) | ③ハイエンド (動画編集・画像生成・ローカルAI) |
|---|---|---|---|
| CPU | Core Ultra 5 / Ryzen AI 5 / Apple M4 | Core Ultra 7 / Ryzen AI 7〜9 / Apple M4・M5 | Core Ultra 9 / Ryzen 9 / Apple M5 Pro・Max |
| メモリ | 16GB | 32GB | 64GB〜 |
| ストレージ | 512GB SSD | 1TB SSD | 2TB SSD |
| GPU | 内蔵で十分 | 内蔵で十分 | RTX 5070以上 (またはApple Max系) |
| NPU | 不問 | 不問(付けば保険程度) | 動画・ローカルAIで意味あり |
| 価格目安 | 10〜15万円 | 18〜28万円 | 35万円〜 |
まとめ ― 「賢く待つ」と「賢く買う」の両立
整理すると、2026年のパソコン選びはこうなります。
- 急がないなら、価格が緩む2026年後半以降をうかがう。
- いま必要なら、無理に高スペックを狙わず、メモリだけは妥協しない構成で早めに。
- 「AI PC」「NPU」の宣伝文句に流されず、自分の使い方に本当に必要なのはどこかを見極める。
パソコンは“高い買い物”に戻りつつありますが、ポイントを押さえれば、この値上げ時代でも失敗しない選び方は十分に可能です。機種選びや見積もりでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。


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